ども台湾在住のナカジマチカ(@nakazimachica)です。
日本以外の市場での発展を目標に台湾人向けの個人SNSアカウントを持ったり、台湾向けインバウンド対策として台湾人から認知される自社のSNSアカウントを育てたいと考えている方もいると思います。
少し前なら台湾人がよく利用するSNSと言えばFacebook、Instagram、そしてYouTubeやTikTokなどの動画コンテンツを軸としたプラットフォームが主流と言われていました。
ただ近年、多くの台湾人ユーザーに利用される新たなSNSが頭角を現しました。Facebook、Instagramを運営するMeta社が2023年7月にリリースしたThreads(スレッズ)です。
今後、台湾人を対象としたSNSマーケティングにおいてThreadsが鍵のひとつになることはほぼ間違いないでしょう。
今回は日本人の自分が、台湾の共通言語となっている台湾華語を使って、台湾人向けにThreadsを一定期間運用してみた結果と感想を書いていきたいと思います。それではご覧ください。
目次
背景と目的
背景
Threadsを使用しているみなさまはご存知だと思いますが、ふとした投稿に対して台湾人(っぽい)アカウントからのリアクションがやけに多いなと感じる瞬間はありませんか。
少し前のデータですが、2024年の5月12日〜18日のThreadsのアクティブユーザー数はアメリカが893万人、日本が330万人、台湾が197万人、全人口に占めるユーザー数の割合ではアメリカは2.7%、日本も2.7%、台湾は8.4%だったらしく、実際にThreadsを利用する台湾人ユーザーは非常に多いことがわかります。
Threadsを利用する目的
自分はナカジマチカのXも含め、過去に日本語でいくつかのSNSアカウントを運用してきましたが、日本人として外国人に向けたSNSの運用経験はありませんでした。
ただ自分も一応台湾華語が話せるし、台湾人に向けてSNSを使ってみたらどうなるのかは前々から気になっていたんですよね。
そこで今回、台湾人の間でテキスト系SNSの定番となってきたThreadsにおいて「日本人の自分が台湾人向けにアカウントを運用すると、どのような結果や感想が得られるのか?」を検証することにしました。
運用するアカウントの紹介
アカウントの概要
何もないところからのスタートにしたかったので、このブログ『ナカジマチカ』とは全く関係のない新規の個人アカウントを用意しました。
元々あった別のInstagramのアカウントからソーシャルグラフを引き継ぐこともせず、Instagramのアカウント及びThreadsアカウントを完全に0から立ち上げています。
投稿を届ける対象は台湾人なので、ポストに使う言語は全て『台湾華語』です。もちろんアカウント名もプロフィール文も全て台湾華語。
一応過去に台湾で1年間の語学留学を経験し、その後も台湾で数年間暮らし続けているので、自分の言いたいことはほぼ問題なく台湾華語で伝えることができます。
「御託はいいからさっさとそのアカウントのリンクを貼れよ」と思う方もいるかもしれませんが、ここではあえて名言しません。
ただSNSのアカウントをいくつか持っていると言っても、アカウントごとに性格やキャラを変えるなんて器用なことはできませんし、考え方や後述する投稿内容はXのナカジマチカとほぼ同じ、相違点は使用言語が台湾華語という点だけなので、わざわざ公表するまでもないかなという感じです。
使い方や投稿頻度
フォロワーが増えたほうが投稿が見られている実感を得やすく、モチベーション向上にも繋がります。さらにここで定量的な評価も書きやすくなるのでフォロワー数を伸ばすことは意識しました。
とは言ってもフォロワーを増やすためにやったことは、より多くの人に自分のポストがリーチするように1日1回決まった時間に関連する画像又は動画付きで投稿することぐらいです。特に何も思いつかなかった日は投稿しませんでした。
あとは時間があれば投稿したスレッドに質問をくれた方に対して返信を行い、投稿内容に沿ってコメントを残してくれた方にはいいね等も反応を返すようにしました。
また、フォローしてくれた人に対しては、そこそこの頻度でポストをしていてどういう人なのか分かるアカウントならフォローを返すようにしました。
あと、いちいち書くまでもないと思っていますが“フォロワーを増やすテクニック”という点において
- 1日に何度も薄い投稿を繰り返す
- フォロバ狙いで手当たり次第に台湾人アカウントをフォロー
- 有名人アカウントのポストに対して返信や引用を行い、有名人のインプレッションにあやかる
みたいな方法は、(単純に面倒くさいのもありますが)アカウント及びそのアカウントの発信内容への興味が薄いフォロワーが増えてしまい、後々フォロワー数とリアクションのバランスが悪い、胡散臭いアカウントに育ってしまうと考えているのでやりません。
SNSに関しては自分の得意分野を分析し、投稿内容が他ユーザーの需要に応えていて、独自性が高く実のあることを地道に投稿し続けていれば結果としてフォロワーは自然と増えていくと思っています。
ポスト内容
まずターゲットを20代〜30代の下記に該当する台湾人に設定しました。
- 日本人から台湾及び台湾人がどう見られているか気になる
- 日本人のパートナーがいる(過去にいた)
- 日本文化に興味を持っている
- 日本旅行が好き
- 日本語を学んでいる
- 日本で生活している
つまり今後あらゆる面で日本と台湾の関係を暖めてくれそうな方々です。
次にポストの内容について。基本的には上記ターゲットが関心を持っていそうなことと自分の興味が重なる内容を投稿するよう意識しました。具体的な主要テーマは下記の通り。
- 日本人から見た台湾や台湾人に関する考察や疑問
- 台湾在住日本人あるある
- 日台恋愛に関するトピック
- 台湾で話題になった日本関連ニュースへの見解
- 自身の経験に基づく日本人の傾向の話
- 自分が好きな日本のモノや場所、サービス
こんな感じで台湾人向けに発信する新参Threadsアカウントの運用を数ヶ月続けてみました(現在も継続中)。
結果を数字で見る
集計期間とポスト数
集計期間はフォロワーが1,000人になるまでの約7ヶ月半(230日)です。ポスト数は229でした。
フォロワーについて
フォロワーが1,000人になった後も投稿を続けているためフォロワー数は毎日少しずつ増えていて、本記事の投稿日(2025年1月5日)時点で1,100人ちょっといます。
体感値ではありますが台湾人以外のフォロワーは10人もいないので、フォローしてくれているのは99%が台湾人でしょう。
単純な比較はできないものの、台湾人のフォロワーが約1,100人いることは、台湾の人口が日本の約1/5〜1/6である点を踏まえると、日本人ユーザーを対象としているナカジマチカのXアカウントのフォロワー約6,500人に近い水準と言えるのかもしれません。
元々Instagramや他のプラットフォーム等でフォロワーを抱えていたり、炎上狙いのような過激な内容を投稿したり、中の人のルックスが強いアカウントではないので、なんにも無いところから耕したにしては頑張った方なんじゃないかと思っています。
データから読み取れること
ポストごとに投稿してから24時間で出た各リアクションの数値を記録し、フォロワー1,000人までの全ポスト(229個)の平均を取ってみると下記の結果が出ました。
閲覧数 | 10570.6 |
---|---|
いいね! | 193.1 |
再投稿 | 4.1 |
引用 | 1.0 |
単独ポストの最高値は閲覧数が283,205、いいね!が6,279でした。けどこれだけ見てもこの数字が少ないのか多いのかは少し分かりにくいですよね。
一方Threadsを始めたての頃だとどのくらいの反応をもらえていたのでしょうか。下記の表は同アカウントのフォロワーが0〜100人までの各リアクションの平均値です。(21日間・19ポスト)
閲覧数 | 5650.9 |
---|---|
いいね! | 72.9 |
再投稿 | 1.1 |
引用 | 0.6 |
こちらの1つのポストの最高値は閲覧数が32,020、いいね!が435で、平均値からも読み取れるようにフォロワーが100人未満でも閲覧数が4,5桁に届き、いいね!が2,3桁になることも何度かありました。
SNSを利用したことがある人は分かると思いますが、おそらくXではフォロワーが少ないアカウントだとこの水準の数字が出ることは稀でしょう。
自分のThreadsアカウントのおすすめフィードを見ると、現在のXように注目されているポストだけが流れてくるのではなく、位置情報や直近の自分のポスト傾向を汲んで反応が多いものから少ないものまでポストがバランス良く提案されているように感じます。
もちろん今後も同じ状況が続くとは限りませんし、始めたタイミングや台湾華語で投稿する日本人の希少性(? などの要因も考えられますが、より多くの人に自分の投稿が見てもらえる可能性を秘めているかもしれません。
「過去にSNSを使ったことがあるけど誰からも反応がないので辞めた」という人にとってはThreadsを使うメリットのひとつになると思います。
台湾人向けにThreadsを運用してみた感想
日本のSNSユーザーとの違い?
過去に自分が日本人向けにX(Twitter)を使用していた時との比較になるのですが
- フォロー・フォロワーなどは関係なしに、いいねも返信もバンバン飛んでくる。
- 意見があれば引用ではなく直接本人のスレッドにコメントしてくる。
(ネット上の距離感も台湾におけるリアルでの距離感と同じ?) - フォロワーが少ないアカウントの「◯◯のおすすめを教えて!」みたいな投稿にもかなりの数の返信が集まる。
上記の日本人ネットユーザーとは若干異なる傾向があるように感じました。
このほかに印象的だったのは、台湾や台湾人に関する耳目を集めることが起きると、多くの台湾人がその件についてThreads上で言及しはじめ、まるでインターネット掲示板の「台湾」スレッドにみんなで書き込んでいるかのような一体感ある動きを見せることがあります。
日本語圏のプラットフォームでもこういった現象は見られますが、台湾人ユーザー達が作り上げているThreadsの方がより“村感”が強い気がします。
心配していた言語面について
自分がいくら台湾華語を話せると言ってもやはり外国人です。
台湾華語を母語のように流暢に操れるわけではないため、突っ込んだ話になると誤った表現をしてしまったり、本来の趣旨とは異なる解釈をされてしまう内容の投稿してしまうこともあったはずです。
意外だったのは、運用開始から今に至るまで文章の間違いについてはほとんど指摘されていません。「ここをもう少し詳しく説明してほしい」と言われることは時々ありましたが、「意味わからんww」みたいな嘲笑混じりの指摘は全くと言っていいほどなかったですね。
これも台湾人とリアルのコミュニケーションをしている時と似ていて、多言語社会である台湾ならではの他者の話す言語に対する包容力を感じました。
特に台湾に語学留学されている方は、Threadsを利用して積極的に台湾華語で台湾生活の様子を投稿してみると、良くも悪くも台湾人の考え方に幅広く触れることができるのではないかと思います。
注意したほうがいいかもしれない点
ただここはインターネットの大海。良識を持っている人間だけが接触してくれればいいのですが、おいそれといかない薄暗さも併せ持っています。こちらもあくまで体感ですが
- ネタポストに対して本気レス(冗談が理解できない)
- 個人のプライバシーに関わることの投稿に躊躇がない
- ポストされた文章の要点を捉えていない
- 自分の知る知識や情報を語りたいだけ
- 粗探しをして攻撃的な物言いをする
といった性質のアカウントが日本語圏よりやや多いと感じました。
実際、台湾華語で投稿している他の日本人ユーザーがこういったアカウントとの遭遇率の高さに不満をこぼしている様子を何度も見ています。
これは単純にコミュニケーション文化の違いだったり、日本人にとっては敬遠されるコメントを残す彼らもそこまで悪意を持っていないのかもしれませんが、これから台湾人向けにThreadsを始める人は心に留めておきましょう。
ただし、この“Threadsユーザーの質”に関しては、日本人相手に日本語でポストしているThreadsユーザーの中にも、ここで触れている件と似た感想を述べている人もいました。
つまり台湾人に限った話ではなくThreads誕生以前にテキストベースのSNSに触れてこなかった人達と、過去にX(Twitter)等を使ってきた人たちとの間にギャップが生まれている可能性もあります。
その他・個人的な自分の変化
日本のあらゆることに対して本当に詳しい台湾人ですが、僕がThreadsに投稿した日本人にとっては身近な日本に関するトピックに対して、自分が想像していたより多くの反響があったりしました。
小さなことでも、まだまだ日本人から台湾人に伝えられることがあるんだなぁという点に面白さを感じながら、日々Threadsを使っています。
あと個人的な自分の変化としては、上述した通り台湾人が自分のポストに対して積極的に返信してくれるおかげで、現代の台湾人が使用する単語や言い回しに触れる機会が増え、Threads開始以前と比較して台湾華語の語彙力が豊富になったと思います。
最後に
以上、日本人の自分が台湾人ユーザーが多いThreadsで、台湾華語を使って台湾人向けにアカウントを運用してみた話でした。
台湾人向けにSNSをやってみようと考えている方の何かのヒントになれば幸いです。
ナカジマチカ / nakazimachica
神奈川県出身。日本で会社員として約7年間働いた後に独立し、中国語を学ぶための台湾語学留学を経てそのまま台湾移住。現在は台中市を拠点にWebコンテンツ制作の個人事業主として生活中。