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台湾版幽遊白書の蔵馬 VS 海藤の禁句(タブー)ゲームがどう展開しているのか調べてみた

ども、台湾に住んでいる幽遊白書好きのナカジマチカ(@nakazimachica)です。

週刊少年ジャンプで連載されている『HUNTERXHUNTER』でお馴染みの冨樫義博氏の作品のひとつに『幽遊白書』というタイトルがあります。この作品は日本国内のみならず海外でも評価が高く、漫画やアニメは様々な言語に翻訳されています。

その幽遊白書の物語は何編かに分かれて構成されているのですが、中にひとつ日本語でないとロジックを通すのが難しいのでは? と感じる話があります。

ネット上で日本以外の国に合わせて翻訳されて発売された幽遊白書の評判を見てみましたが、良い形に改変されているものもあれば、今回の懸念通り論理が破綻してしまっているものもあるそうです。

そこで今回は台湾に住んでいる僕が台湾版幽遊白書のそのお話「蔵馬 V S海藤の禁句(タブー)ゲーム」がどのように展開されているのかを検証してきました。どうぞご覧ください。

目次

そもそも幽遊白書とは?

台湾版幽遊白書13巻

日本の漫画家 冨樫義博氏による漫画作品のひとつです。正式名は『幽☆遊☆白書』。

基本的には少年漫画の王道であるバトル漫画なのですが、作品がリアルタイムで描かれていた当時小学生だった自分にとっては難しいテーマやドラマ性も絡む大変魅力的な漫画でした。

余談ですが、幽遊白書は皆さんご存知の週刊少年ジャンプで1990年から1994年にかけて連載されていて、同時期に連載されていたドラゴンボール、スラムダンク、ジョジョ等の名だたるタイトルと並んで、当時連載されていた中の大人気漫画のひとつです。

これら作品は数十年の時を経て今尚多くのファンに愛され続けているため、人気タイトルが同時期にジャンプで連載されていた上記の時代を『ジャンプ黄金期』とも呼んだりします。

「禁句(タブー)ゲーム」とは?

幽遊白書は上述のようにバトル漫画なので、物語の大部分は主人公達とその対抗勢力とされるキャラクター達が力と力をぶつけ合いながら進行していきます。

ですが今回取り上げたい内容は、主人公グループのひとり蔵馬が『禁句(タブー)』という能力を身に着けた海藤と繰り広げた頭脳戦です。

この禁句(タブー)という能力は、海藤によって特定の条件下でのみ発動し、この能力が発動するテリトリー内(約10m)では海藤に対してのいかなる暴力も無効化されてしまいます。

誰であってもその能力のルールには従う必要があるので、普通に殴り合いをしたら確実に海藤を力で圧倒することができる主人公達も渋々そのルールに則って海藤との勝負に挑みます。

禁句(タブー)ゲームのルールは、「海藤のテリトリー内で言ってはいけない言葉(禁句)を言ってしまったら負け」というシンプルなもので、禁句となっている言葉を口にしてしまった場合、魂が海藤に奪われてしまいます。

魂が抜けた肉体はそのまま放っておくと亡くなってしまうので、頭脳戦と言えどゲームの敗者 = 死になる命をかけた戦いになるわけです。

台湾版幽遊白書の蔵馬VS海藤の禁句(タブー)ゲームを見てみる

さてそれではいよいよ実際に内容を見ていきましょう。台湾版幽遊白書の単行本で蔵馬VS海藤の禁句(タブー)ゲームが始まるのは日本版と同じ13巻です。

この記事を読んでいるのは幽遊白書を読んだことがある人を前提としているので、ストーリーの細かい説明や描写は省きますが、日本版と台湾版の相違点や自分が気づいた点など、重要なポイントを書いていきます。

ちなみに幽遊白書などの漫画本を含め、今日の台湾で出版されるものは基本的に中国語(台湾華語)が用いられています。

禁句(タブー)「あつい」

テーブルと椅子

まず蔵馬・飛影・ぼたん・桑原の4人で初めて海藤と対峙した時のシーンです。この時の禁句(タブー)は「あつい」。

海藤が居る四次元屋敷の前に貼られていた注意書きには、オリジナルの日本版と大体同じで「この家に入った者は(中略)もし言えば…。」と中国語で書かれています。

「あつい」の部分は、中国語なので「熱い、暑い」を意味する「熱」に翻訳されていました。

物語が進行し、飛影・ぼたんは原作通り「熱」を含んだ発言をしてしまい魂を取られてしまいます。

さて、桑原がタブーを言ってしまうシーンはどうなっているのでしょうか。

桑原は「あつい」と言うことには細心の注意を払っていましたが、「ああ。」→「ついでに〜」と会話の中で言ってしまい、「あ」「つ」「い」を意図せず連続的に言って魂を取られてしまいますよね。

台湾版幽遊白書では該当シーンの桑原のセリフはこう書かれていました。

「好。」→「這兒的杯子〜」

このセリフを日本語に訳すと「ああ。」→「このコップの〜」となります。

例のシーンの桑原のセリフ
日本版「ああ。」→「ついでに〜」
台湾版「ああ。」→「このコップの〜」
「好。」→「這兒的杯子〜」 ※台湾版原文

このシーンのセリフは上記の通り日本語版と微妙に異なっており、台湾版独自のアレンジが入っています。

「這兒 zhè ér」が「熱 rè」と似た発音として認識され、桑原が「好熱」と言ったことになり、先の2人と同じように魂を奪われてしまいます。

つまり、台湾版幽遊白書では「該当する言葉を会話の中で続けて言ってはいけない」に、「似た発音も続けて言ってはいけない」というルールを追加して、物語の辻褄を合わせたようです。

禁句(タブー)「五十音(あいうえお)」※1分ごとに1文字ずつ増える

街頭

次に飛影・ぼたん・桑原の魂が奪われた後、残った蔵馬と海藤の一騎打ちとなり、蔵馬が提案した「五十音順に1分ごと、1文字ずつ禁句(タブー)が増えていくルール」で勝負をするシーンです。

ここは結論を先に言うと、台湾版幽遊白書も日本語の「五十音(あいうえお)」をそのまま使って物語が進行します。

拍子抜けしてしまうのですが、一応コマ外に「※あいうえおは日本の五十音です。注音(台湾の発音記号)と似た記号。」と中国語で注意書きが書かれていました。

これは各中国語のセリフの音をカタカナ発音に置き換えた前提で物語が進行していくということなのでしょうか…。いや、もしかしたらキャラクター達が突然日本語のかなを発する場面があるのかもしれません。続きを読んでみましょう。

中国語で進行する台湾版幽遊白書で、日本語の「五十音」をそのまま採用する場合の疑問

  • 基本的に各キャラクターのセリフは中国語なので、中国語の音をカタカナ発音に置き換えた前提でジャッジしていくのか?
  • 純粋に日本語の五十音の発言の有無でジャッジするのか?

序盤で海藤が蔵馬へ「い」がそろそろ使えなくなることを忠告するために、自分が発した「い」の回数を告げるシーンは日本版と同じ9回のままでした。ですが中国語に翻訳されたセリフではどう読んでも「い」は3回くらいしか言っていません。(※カタカナ発音に置き換えた前提)

更に海藤は最初のあ行全てが使用できなくなった後「已經少了一行字〜」というセリフを放ちます。

もし中国語のセリフの発音をカタカナ発音に置き換えてジャッジするならば、上述のセリフ冒頭にあった「已經」はカタカナに当てはめると「イージン」と発音するので、海藤は既に「い」を言っていることになります。ですが物語は何事もなく進行していきます。

ゲーム開始から数十分以上経過し、ほとんどの文字が使えなくなったクライマックスです。蔵馬の変顔? を見た海藤が「啊哈哈哈」と笑いながら勝負に破れます。

「啊哈哈哈」をカタカナ発音に直すと「アハハハ」なので、どうやら今まで無視されていた中国語のカタカナ発音のルールが最後のみ適用されたようです。

まとめ

台湾版幽遊白書の蔵馬 VS 海藤の禁句(タブー)ゲームがどう展開しているのか検証してみたところ、「あつい」に関しては、アレンジを加えて若干強引に辻褄を合わせ、「あいうえお」は、一部日本語を流用しそのまま乗り切ろうとしたが細部に少しほころびが出ていたという結果が出ました。

一種の日本語遊びを外国語版に直すのは難しいことだと思うので、ここでとやかく言うつもりはありませんが、日本語ができて日本版幽遊白書を読んだことがある台湾人はどう思うのかが気になるところです。

ナカジマチカ

ナカジマチカ / nakazimachica

神奈川県出身。日本で会社員として約7年間働いた後に独立し、中国語を学ぶための台湾語学留学を経てそのまま台湾移住。現在は台中市を拠点にWebコンテンツ制作の個人事業主として生活中。

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