ども台湾在住のナカジマチカ(@nakazimachica)です。
僕が初めて台湾を訪れたのは2012年のことで、当然ですがそこからの台湾の姿しか実際に見たことはありません。
インターネット上や台湾史に関する講演会などで昔の台湾を写真で見る機会はありますが、以前の台湾が実際どんな雰囲気だったのだろうと思い耽ることもあります。
そんな中1960〜1970年代の台湾の街並みを店内に再現してしまったレストランが台中にあることを知り、早速行ってまいりました。
今回はそのテーマレストラン「香蕉新樂園」を紹介していきたいと思います。それではご覧ください。
目次
香蕉新樂園とは?
香蕉新樂園は台中にあるテーマレストランです。
広い店内には1960〜1970年代の台湾に実在した建築やお店などを復元した町並みが再現され、当時の台湾にあった広告や写真、生活用品なども展示されています。
台湾の文化や歴史に触れながら台湾料理、点心、軽食、飲み物などを楽しむことができます。
香蕉新樂園への行き方
香蕉新樂園への行き方ですが、台中駅周辺からアクセスする場合は、臺中車站(C月台)から50路線のバスに乗り「文英児童公園」で下車します。
するとすぐ近くに香蕉新樂園の建物が見えます。
香蕉新樂園の様子
こちらが香蕉新樂園の入口です。30周年の文字が見えるように台湾ではそこそこの老舗です。
店内に入ってすぐの様子。入口からは分かりにくいですが2階建ての建物がすっぽり収まるくらい天井が高いので、室内に建物が並んでいても圧迫感はありません。
建物は主に当時の町並みによく見られたバロック様式と閩式の混合建築が軒を連ねます。
建物のスケールはほぼ実寸大なので、レストラン内部に町並みが再現されているというよりは、本当に過去の台湾の町並みの中にテーブルを置いて食事をしているような気分になります。
ちょうど通りかかった店員さんの大きさと比べて頂ければ、このサイズ感がより伝わると思います。
再現されているお店や町並みの細部を見ていきましょう。こちらは理髪店です。
長(く)生(きる)。とても明快なネーミングの病院。
日本式建築の雑貨屋さん。
トタン屋根の上で干しているスニーカーはオールスターと見せかけて「中國強」。台湾のブランドです。
騎樓。台湾の老街と呼ばれる場所では今でもこの景色に近い雰囲気が残ってますよね。
タクシー乗り場。脇にちょこんと置いてあるベンチの造形が可愛い。
看板に記された電話番号の桁数に注目(現在は市外局番を除いても8桁)。
そのスケール感からつい上ばかり見上げてしまいますが、床にもさりげない小道具が。
手洗い場です。貼られているイラストの町並みがほぼ日本。
男性トイレの無骨なピクトグラムが格好良い。
1階お手洗いには公衆衛生に関するポスターが貼られています。今の衛生観念が定着する前の公衆トイレはこんな感じだったのでしょうか。
衛生所の掲示板。人工的に作られたものとは思えない質感があります。
こういった微妙なかすれ具合まで忠実に再現。
小さな張り紙から看板、案内標識まで本当に隅々まで作り込まれています。
こちらは台湾で販売されている歯磨き粉「黑人牙膏」の初期デザインの広告。今も人の顔がロゴマークになっていますが方向性は異なり、当時はかなりリアルな人の顔です。
人によっては感じるものがある名称から台湾社会でも物議を醸してきましたが、2020年にアメリカのジョージア州で起こった事件を受け、近いうちに商品名とロゴマークの変更するそうです。
日本人でも懐かしさを感じる円筒形郵便ポスト。
その郵便ポスト側面にあったステンシル。台湾ではほんの数十年前までこういった標語が街に至るところで見られたそうです。今でも金門へ行けばこういった政治スローガンが残っている場所もあります。
ここには「私は国語を話し、方言を話しません。」と書かれています。国語はつまり今日の台湾の共通の言語として使われている中国語(台湾華語)のことです。
台湾は中華民国の統治下に編入された後、国語の普及を進め、それまで台湾の共通語として機能していた日本語を新聞や教育機関などから排除し、家庭などで私的に使用されていた言語(台湾語、客家語、原住民の諸言語など)は学校では使用しないよう指導した歴史があります。
成人がやっとひとり通れるくらい狭い路地もしっかりした作り込み。
奥に進むと映画館も再現されています。
脇に貼られていた映画ポスター。
映画館の中へ入ると2階へ続く階段があります。
数十年前に台湾で留学をした方の講演会に参加した時に聞いた話なのですが、昔の台湾の映画館は映画上映前に中華民国の国歌が流れ、観客は起立して唄う必要があったそうです。
2階の奥へ進むとオーナーの呉さんが長年コレクションしてきた映画関連グッズが飾られています。
海外映画のお宝ポスター。
2階のお手洗い入口。香蕉新樂園には手に入れるのが難しそうなコーラ関連グッズが特に多いのでコーラ愛を感じます。
さて町の方に戻ってもう一度辺りを見回してみると、日本製品の広告がちらほらあることに気づきます。
現在は販売されていない藤沢薬品工業(現:アステラス製薬)のチオクタン。当時は肝機能障害や糖代謝のための薬だったらしいですね。
パッと見どんな製品なのか想像できない日本語の広告。調べてみたらニットは昔「メリヤス」と呼ばれていたそうです。「デーア(DEER)」はブランド名。
日本人が経営していたお店の表札も再現。
現代の台湾では日本っぽさをデザインする時などにひらがなやカタカナを用いることがありますが、ここには当時の台湾を生きた日本人の記憶も残されています。
再現された町並みの他にも、店内には当時の広告や写真、物があちこちに展示されているので、それをひとつひとつ見て回るのも香蕉新樂園の醍醐味です。
こちらは1964年に公開された台湾映画「台北發的早車」のポスター。
雑貨屋さんの横に展示されていたおもちゃ類。
一部のテーブル席は当時実在した広告?でラッピングされています。どこかで見たようなピンク色の豹。
こちらはオーナーのフィルムカメラコレクションでしょうか。
当時の生活日用品の展示。状態が非常に良いです。
最後に
以上、台中のテーマレストラン香蕉新樂園の紹介でした。
僕のように台湾の歴史に興味を持つ人はもちろん、当時の台湾ことをあまり知らない方でも、その極限まで作り込まれた世界に浸って楽しめると思います。
台中駅からのアクセスも比較的容易ですし、一中街という活気に満ちたショッピングエリアも近くにあるので、台中を訪れた際は是非利用してみてはいかがでしょうか。
店舗情報
香蕉新樂園
台中市北區雙十路二段111之1號地図(Googleマップ)で見る
営業時間/11:00〜23:00
定休日/なし
ナカジマチカ / nakazimachica
神奈川県出身。日本で会社員として約7年間働いた後に独立し、中国語を学ぶための台湾語学留学を経てそのまま台湾移住。現在は台中市を拠点にWebコンテンツ制作の個人事業主として生活中。