1. 「ナカジマチカ」トップページ
  2. 考察
  3. 「日本人は台北以外へ行かない」を考えてみる
Update

「日本人は台北以外へ行かない」を考えてみる

ども台湾在住のナカジマチカ(@nakazimachica)です。

僕は2020年6月に約4年間住んだ台北市から台中市へ引っ越しをしたのですが、先日数年ぶりに“台北旅行”をしてきました。で、その時思ったんですよね「あっ台北たのしい…」と。

今回は台北の楽しさを改めて感じたのをきっかけに思い出した「日本人は台北以外へ行かない」という話と、台北観光の魅力や特徴について考えてみたいと思います。それではご覧ください。

目次

日本人は台北以外に行かない説をデータで検証

台北の街並み01

ネットなどで時々見かける「台湾を訪れる日本人観光客は台北以外へ行かない」という声。

確かに台北で見かける日本人はその他の地域で見かける日本人と比べて多いと感じますが、実際のデータはどうなっているのでしょうか。

この件については台湾の交通部觀光局が作成した來台旅客消費及動向調查というレポートが参考になるので、そこに書かれたデータを拾って日本人観光客の動向を見ていきたいと思います。

日本人の(観光スポットがある)訪問地域ランキング

交通部観光局「2019年來臺旅客消費及動向調查報告」(2020年8月)p95

上記は2019年に台湾を訪れた日本人1,435人を対象に作成された、(観光スポットがある)訪問地域ランキングです。※11位以下省略

棒グラフの横の数値は相対次数になっていて、台北市が83.97で1位、台北市に隣接する新北市が58.54で2位なのに対し、3位に続く台湾南部の高雄市は8.71という非常に低い数字にとどまっています。

2018年・2017年のランキングも3位までは2019年と同じ順位ですが、高雄市の数値がもう少し高かったので2019年は日本人が台北エリア以外へ行かない傾向がより強まってきています。

各国・各地域の人の訪問地ランキング

交通部観光局「2019年來臺旅客消費及動向調查報告」(2020年8月)p465-466

日本人に限らず台湾を訪れる外国人観光客は台北エリアに一極集中しているのでは? という疑問もあるので、日本人以外の訪問地域ランキングもあわせて見てみましょう。

上記の図はレポートにあった各国・各地域の訪問地ランキング5位までを複合グラフにしたものです。台北市と新北市でワンツーなのはどこも同じですが、その台北エリア2つが突出していて3位から極端に数値が下がっているのは日本・韓国ということが分かりました。

※新南向18ヶ国:インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオス、インド、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、スリランカ、ブータン、オーストラリア、ニュージーランド

日本人観光客の最も好きな観光地の比率ランキング

交通部観光局「2019年來臺旅客消費及動向調查報告」(2020年8月)p100

おまけとして日本人観光客の最も好きな観光地の比率ランキングも見てみると、発表された1位〜9位の全てを台北(台北市・新北市)にある観光地が独占しています。これまでのデータを踏まえると仕方ない結果ですね。

※3位の「夜市」は台北以外の地域にある夜市も含んでいるので除く。

微風南山から見上げた台北101

関連性の高そうなデータを見るにあたって引用したレポート(來台旅客消費及動向調查)は、クォータサンプリングによって選定した外国人観光客に対し調査を行っていると書かれていたので、そこまで大きなズレはないはずです。

これらのデータが台湾を訪れる日本人の傾向を表しているすれば「日本人は台北(台北市・新北市)以外に行かない」と言われても仕方ないような気もしますね。

次の項目では日本人はなぜ台北にしか行かないのか、その理由を台北観光の魅力や特徴を含めて、個人的な考えを述べていきたいと思います。

なぜ台北以外へ行かないのか? 台北観光の魅力や特徴とあわせて考える

台北市内への導線がしっかりした桃園空港行き便の多さ

桃園国際空港の案内

交通部民用航空局の出している近六年各機場旅客數趨勢圖を参照すると、桃園国際空港を除いた各国際空港の利用客は年間数百万人ですが、2019年では年間約4,900万もの人々が桃園国際空港を利用しました。

ご存知の通り日本各地の空港からも桃園国際空港行きの飛行機がバンバン飛んでいますよね(感染症流行中を除く)。

そして桃園国際空港からの導線がしっかりと確立しているのが台湾最大の都市であり経済・政治・文化の中心地でもある台北市です。

複数地域を跨って旅行する計画を持って台湾に来る方の中には、とりあえずアクセスしやすい台北市を訪れ、そこから新幹線やバスなどを利用して別地域へ行ったり、台北発で別地域に行くツアーに参加したりする方も少なくはないことが予想できます。

台北観光情報の比率が高い

本題に入る前に、日本人観光客が台湾渡航前にどのように台湾観光情報を手に入れているかについてですが、再び來台旅客消費及動向調查を開き「台湾に来る前にどこで台湾の宣伝広告や旅行ガイドを見たか」という項目を見てみます。

台湾に来る前にどこで台湾の宣伝広告や旅行ガイドを見たのかランキング

交通部観光局「2019年來臺旅客消費及動向調查報告」(2020年8月)p86

この項目は848人を対象にしたデータなのですが、「インターネット(SNS含む)」と回答している人(100人あたり66.05人)が1位で、2位の「家族・友人の口コミ」を大差で引き離しているので、日本人が現在台湾の観光情報に触れる場所はインターネットが中心になっていることが分かります。

そこで早速Googleで「○○(台湾の地域名)観光」と検索してみると、「台北観光」だけは他の地域と比較して文字通り桁違いのヒット数が出ます。

今や情報検索におけるプラットフォームとなったInstagramでも「○○(台湾の地域名)観光」でタグ検索すると、台北観光は1.3万人、台中観光・台南観光・高雄観光は投稿1,000件以上、花蓮観光・台東観光に関しては投稿100件以上…という結果が表示されやはり台北一強の様子。

※Instagramに関しては一部アカウントがエンゲージメントを高めるため台湾に関する投稿に「台北観光」というタグを詰め込んでいる可能性がある。

日本語情報の多さがもたらす安心感

大稲埕霞海城隍廟にある日本人向け案内

僕自身は基本的に日本語以外で台湾人とコミュニケーションを取っているので、「台湾は日本語を話せる人が多い」についての真意は段々分からなくなってきているのですが、日本語を目にする機会に関しては台北で過ごしていると特に多いです。

交通機関やある程度有名な観光地には日本語の案内や注意書きがある場所もあり、観光客が多く宿泊するホテルや観光スポット周辺の飲食店なら日本語メニューも置いてあることも少なくなく、日本語話者にとって台北は比較的観光しやすい場所だと思います。

交通手段が豊富なので自由自在に移動できる

台北市・松山駅

台北はMRT、新幹線、鉄道、バス、シェアサイクル、シェアバイクなど交通手段が豊富に揃っており、各交通機関の駅やバス停、シェアサイクルステーションなどの数自体も多いので、大抵の場合はどこにいても目的地へ行くための最適な交通手段を選ぶことができます。

また徒歩移動に関しても、他の地域と比べ車道と自転車道、歩道が明確に分かれている道や、雨や日差しを避けることができる騎樓(2階部分が屋根になった半屋外の1階通路)も多いので、街歩きの能率が良い点も見逃せません。

適度にある変化

台北の街並み02

僕が台北に住んでいた時、用事や旅行などで台北を離れたのがたった数週間でも、台北へ戻ってくると街ではビルの取り壊しや建設、新しいお店のオープンなど様々な変化が目につきました。

台湾を旅行で頻繁に訪れるという人でも間隔は最低でも数ヶ月は空くと思うので、台北観光は何度しても新鮮な気持ちを保つことができるのではないかと思います。

種種雑多な街並み

台北MRT大安駅周辺の通り

僕が最初に台北へ観光で来た時に思ったのは「ただ街を歩いているだけで面白い」です。

台北は住むという観点からみると、人口密度が高く建物も多いので決して素晴らしいとは言えない環境なんですが、観光で数日滞在する側から見ると、この密度高く並んでいる新旧の建物が生み出す雑多な街の雰囲気がワクワクするんですよね。

ちょっと入って探検してみたくなるような小路も非常に多いです。

コンパクトに収まった様々なエンタメ

銀河洞越嶺登山步道

国際空港、グルメスポット、ショッピング街、山、川、海(港)、温泉地、最新鋭の設備を備えた施設や歴史建築などを含む観光地、これら全てに1〜2時間あればアクセスできるのが台北エリアです。

2泊3日、3泊4日程度の短期滞在でもたくさんの観光スポットやグルメをまとめて楽しめる台北は、長期休暇が取りにくい日本人のライフスタイルに合っているのかもしれません。

最後に

台北駅1階ホール

以上、日本人は台北以外へ行かないという話と台北観光の魅力や特徴について考えてみた話でした。

もちろん現在僕が住んでいる台中のような台湾の地方都市にもたくさんの魅力はあります。

僕は時間を見つけては台湾の様々な地域を訪れその度に新たな発見があり感動を覚えていますが、こうして改めて台北と向き合ってみると台北旅行が持つ手軽さや利便性、楽しさは強すぎると思います。

「日本人は台北しか行かない」と言われたとしても、だって台北楽しいんだもん。仕方ないですよね。けどもし台湾の他の地域が気になったら足を伸ばしてみると、台湾の新たな魅力に気づくかもしれません。

ナカジマチカ

ナカジマチカ / nakazimachica

神奈川県出身。日本で会社員として約7年間働いた後に独立し、中国語を学ぶための台湾語学留学を経てそのまま台湾移住。現在は台中市を拠点にWebコンテンツ制作のフリーランスとして生活中。

詳しいプロフィールを見る

本ブログの更新情報をチェック

微風南山から見上げた台北101
ナカジマチカ

ナカジマチカ / nakazimachica

神奈川県出身。日本で会社員として約7年間働いた後に独立し、中国語を学ぶための台湾語学留学を経てそのまま台湾移住。現在は台中市を拠点にWebコンテンツ制作のフリーランスとして生活中。

詳しいプロフィールを見る

今週の人気記事 TOP5