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台湾在住日本人から見る台湾のジェンダー規範と、日本では「女子力が高い」と言われる僕が台湾で過ごしやすい理由

はい、普段自分でも使わないような少し難しい言葉を含んだタイトルではじまりました。ナカジマチカ(@nakazimachica)です。

僕は現在台湾に住んで2年半くらいになりますが、日本より台湾の方が過ごしやすいと思っている理由が何個かありまして、その内のひとつに性別によって押し付けられる理想像が日本と異なるという点があります。

今回はそのおかげで自分は日本人だけど台湾での生活が精神的に楽という話を例を交えながらしていこうと思います。どうぞご覧ください。

僕が日本で暮らしていた頃によく言われていたこと

書棚

  • 新しくできたカフェや美味しいスイーツの店、美容などに詳しかったら、友人から「女子より女子っぽい」
  • 居酒屋などで甘い酒を飲んだら、お酒に強い人から「女々しい」
  • 髪を長髪にしていたら、祖父や祖母から「女みたいだから髪をしっかりしろ」

これらはほんの一例ですが、僕が日本で暮らしていた頃、自分が好きで選んでいることを性別が男だからという理由だけで、相手の価値観で男らしくないと言われたり、言動を暗に否定されることがしばしばありました。

また、日本では女性の役割であると認識されている事をやれば「女子力高い」という褒めているのか何なのか分からないモヤッとした言葉で括られることも日常茶飯事です。

台湾の日常の一例から見る、日本と比べた時の性別に求められる理想像の偏りの少なさ

台北MRTのホーム

男性のみでスイーツ店へ行くのは普通

門構えからして気軽に入りやすいオープンなお店が多いことも関係していると思いますが、台湾では男性だけで甘味のお店に入って楽しそうにスイーツをつついている光景も珍しくありません。

日本だったら男性のみでそういったお店に入れば、店内にいる女性客及び店員から軽く注目され、異質な存在として扱われてしまうこともあるでしょう。

男性の積極的な育児は当たり前

台湾の街を歩く子連れの台湾人夫婦を見れば一目瞭然ですが、男性が幼子を抱えつつ奥さんを甲斐甲斐しく世話する様子をよく見かけます。

日本でもそういった男性が全くいないわけではありませんが、イクメンという言葉がチヤホヤされたり、男性の育児による休暇などを会社が快くサポートできないといった状況はいまだによく目にしたり耳にします。

このような日本社会の現状は、父親が積極的に育児をするのは自然なことだという認識が薄く、家族内で役割分担に偏りがあることを顕著に表しているでしょう。

女性の化粧やムダ毛処理はマナーに起因するものではない

日本では学生の内は化粧をしないよう先生から指導されますが、女性は就職活動を始めると社会人は外に出る時は化粧をするのがルールという、それまでとは反対のある意味矛盾した教えを受けることになり、会社員になれば化粧をせずに出勤するのはマナー違反とすら言われます。

さて台湾ではどうでしょう。今までもこのブログで何度か紹介してきましたが台湾人女性は会社へ出勤する時もすっぴんの方が多いです。またファッションやムダ毛処理に関しても比較的自由です。

台湾では化粧やファッションなど身なりに関することは、一部の職業の方を除き、日本のように社会や周囲からの圧力によって強制されたりするものではなく、自分自身が必要だと思った時に自由に行うものという認識です。

平日の街を歩く男女

僕は現在数ヶ月に1度日本へ行く生活をしているのですが、その際に僕が住む台北の状況と大きく異なるので驚くのが平日の街を歩く男性比率の高さです。

台北では平日も仕事をしている女性がたくさん外を歩いています。体感ではむしろ女性の方が少し多いくらい。これってフルで働いている女性が男性と同じくらいかそれ以上いるってことですよね。

今の日本人の10代、20代の方は考え方は全然異なるでしょうが、僕と同世代(30代前半)の女性且つ独身の地元から離れたことがない友人等と話すと「早く結婚したい。結婚して早く楽したい。」という考えを聞くことは少なくありません。

楽できる(仕事をしなくて済む)のがなぜか決まっているのは「男性は仕事、女性は家庭」という固定観念が少なからずあるからかもしれませんし、ちびまる子ちゃんやサザエさんという現代の生活スタイルとは乖離したアニメを見て育った世代だから仕方ないのかもしれません。

その他に平日の街つながりで台湾と日本の違いをもうひとつ挙げると、台湾は街の歩きやすさも高いと思います(交通マナーや道の整備状況は日本より酷いけどね)。

僕が日本で会社勤めをしていた頃は、平日にベビーカーを押す女性が少し混んだ電車に乗れば、その近くにいたベビーカー分スペースを圧迫されたサラリーマン男性がその女性と幼い子に対し罵る等の、女性の立場を下に見ていなければ起きないような場面に遭遇することも少なくありませんでした。

日本では平日に外出すると、黒い衣装に身を包んだ偉そうなおじさん達が機嫌悪そうに歩いていて不快に感じることが多いので、このあたりも日本では女性が大手を振って外を歩いていないところに多少なり関係していると思います。

男女一緒にいる時の人々の振る舞いが自然

街中で男女グループの台湾人を見かけると、男女がかなり近い距離で楽しそうに話をしている様子が伺えます。異性の友人をバイクの後ろに乗せて家まで送っていくのは結構普通という話もあるくらい台湾では恋人ではない男女の距離も近いです。

これには男女という性別の違い以前に、ひとりひとりがまず1人の人間として人間と接するという前提を持っているように見えます。そういえば台湾の一人称は男女ともに「我」ですね。

思うに日本人は性別の違いを変に意識しすぎじゃないでしょうか。実際、日本では女性を変に怖がるが故に貶めたり、逆に過剰に崇めるなど、女性を対等な存在として扱うのが下手な男性も少なくない気がします。

また、その他に日本の男女の関わりが悪い状況になっていると特に感じた場面は、利用者が比較的多い駅のホームです。

ご存知の通り日本の電車には女性専用車両及びその車両の待機列が用意されています。しかしながらその他の一般の列でも、ある列では男性しか並んでいなかったり、その隣の列では女性しか並んでいなかったりするんですよ。

電車についてはおそらく痴漢などの犯罪行為問題の影響もあるかと思いますが、僕から見るとこういった何気ない日常の一場面から、日本は不自然に男性が女性を避け女性は男性を避け、そして社会がお互いの関係についての根本的な解決から逃げ続け、男女の隔たりだけが大きくなっているのを感じます。

台湾では性別で消耗することが少ない

象山の登山道

紹介した台湾の日常の一例から読み取れるように、実際に今台湾で生活している自分も、日本に蔓延る多方面からの「男(女)はこうあるべき」というプレッシャーをほとんど感じることがありません。

また、日本で生活をしたことがある台湾人を除き、台湾で生活する中で知り合った台湾人やその他外国人と会話の中で「男(女)のくせに」みたいな話題が出てきたこともほとんどありません。

台湾は“型通りの男女”以外の人間の多様性について寛容であり、僕のような「女子力が高い男(という言い方は嫌いですが)」も社会から許されているのを感じます。

最後に

台湾のホテルのファザード

台湾人と結婚して台湾人家族との交流が増えたり台湾社会に深く入り込んでいくと、また性別によって求められる役割の印象は変わってくると思います。

ただ、僕から見る台湾の日常の範囲内では、台湾は日本のようにジェンダー規範が一元化されることなく、人の在り方は比較的自由であり、男女は平等に近いのを実感します。

もしかすると“女は一歩下がって男を立てる”日本社会に慣れてしまっている日本人男性にとっては、女性が男性と対等に主張する台湾は居心地が悪いと感じるかもしれません。

ですが日本人女性やその他の日本での生活に窮屈感を覚えている人は、旅行でも良いので台湾の街を少し歩いてみてください。

ちょっとした人々の仕草や行動で、色々な個性を持つ人間が日本より多くの権利を有して生きている場所ということを肌で感じるはずです。

ナカジマチカ

ナカジマチカ / nakazimachica

神奈川県出身。日本で会社員として約7年間働いた後に独立し、中国語を学ぶための台湾語学留学を経てそのまま台湾移住。現在は台中市を拠点にWebコンテンツ制作のフリーランスとして生活中。

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神奈川県出身。日本で会社員として約7年間働いた後に独立し、中国語を学ぶための台湾語学留学を経てそのまま台湾移住。現在は台中市を拠点にWebコンテンツ制作のフリーランスとして生活中。

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