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「歩行者の生き地獄」と形容された台湾の交通環境に活路はあるのか?

ども台湾在住のナカジマチカ(@nakazimachica)です。

台湾には良いところがたくさんありますが、台湾に旅行や出張に来たことがある人、自分のような台湾に住む外国人、台湾人といった台湾に関わる人の大部分から著しく評価が低いのが台湾の交通環境です。

アメリカのCNNに至っては、そんな台湾の交通環境を「歩行者の生き地獄」と酷評するほど。

Taiwan’s ‘living hell’ traffic is a tourism problem, say critics | CNN Travel

幸い自分や身の回りの人たちはまだ大きな事故には遭っていないものの、路上に出れば理不尽な場面に遭遇することも多く、最近立て続けに目の前で2件の交通事故を目撃してしまったこともあって、明日は我が身という覚悟を持って日々外出しています。

そこで今回は、そんな台湾の交通事情、そして自分だったら台湾の交通環境をどう改善するか? についてちょっと書いてみたいと思います。どうぞご覧ください。

目次

台湾の交通事情

台湾の道路

データ

2022年の交通事故件数を見ると日本が約30万件なのに対し台湾が約37.5万件。

件数だけ見れば数万の差ですが台湾の人口は日本の1/6程度なので、1年の事故件数が日本を上回る台湾の交通がいかに深刻な状況なのかは分かると思います。

更に台湾の交通部(日本の国土交通省に相当)が公表している統計のグラフを見れば分かる通り、事故件数は2017年(民國106年)に底を打ってからは右肩上がりで増加しています。

映像

無論データだけ見ても、知らない人は台湾の交通がどんな状況なのかは想像もつかないと思います。気になった人はYouTubeチャンネルWoWtchoutの映像を見てみましょう。

SNSなどで見かけるような衝撃的な場面を切り取った映像ではありませんが決して軽視できる内容ではなく、台湾の交通は動画に出てくるような運転マナーの積み重ねで1日約1,000件の事故が起きている※1のだと実感させられます。

※1 台湾安全情報(2022年1月~6月) 新着情報 | 公益財団法人日本台湾交流協会

台湾の交通環境をどう改善するか?

この看過できない台湾の交通環境の問題を改善するとしたらどうすれば良いのでしょうか。

よくネットで見かける台湾の交通環境を改善するための方法なんですが

  1. 運転免許試験の難易度を上げる
  2. 交通違反の罰則を重くする
  3. 歩道や横断歩道周りの交通設計を改善

などが挙げられます。

正直なところ台湾で生活している身としては、上記の方法では台湾人の行動や生活習慣を変える動機として機能しないため、台湾の交通環境を大幅に改善するのは難しいと思われます。

もし本気で台湾の交通環境を改善するなら、異次元の少子化対策もとい異次元の交通安全対策が必要になるでしょう。

といった前提があった上で、もし自分が「台湾の住民の声を無視して予算も好きに使って台湾の交通環境の改善に取り組んでいいよ」と言われたら「歩行者優先の街づくり」をスローガンに掲げて次みたいなことをやるんじゃないかと思います。

もちろんこれは台湾に住んでいるだけの素人が考える戯言なのでエンタメのひとつとして読んでください。

1. 違法駐車取締の徹底

違法駐車をしている車

そもそもこれができていないから今の状態があるわけなんですが、違法駐車を大幅に減らすことができれば台湾の交通環境はかなり改善するでしょう。

日本のようなガードレールによる歩道と車道の仕切りが設置されている場所が少ない中、歩道に堂々とバイクや車が停まっていて(もちろん駐禁場所)、歩行者は車両を避けるため仕方なく車道に出て歩かなければいけない場面が多すぎるんですよね。

現状は違法駐車数が多すぎるため、人力で一台一台取り締まるのは現実的ではないので、違法駐車取締システムなどを利用して、駐禁場所に車両を駐車したら自動的に罰金が課されるように自動化したいところ。

2. 公共交通機関の充実

なぜ駐車してはいけない場所に駐車する状況が生まれるほど台湾にバイクや車が多いのかというと、台湾人が利便性を求めているのに加え、バイクや車に乗らないと不便な社会だから(不便な時期が長く続いたから)ですよね。

台北市及び新北市はバイクや車を持たなくてもMRTやバスが非常に発達していて、郊外でなければ基本的にこの2つの組み合わせで行きたい場所に行くことが可能です。

ただ台湾のその他地域に目を向けてみるとMRTがあるのは桃園、高雄、台中のみで、僕が住んでいる台中に関してはまだ1路線しか開通しておらず(2023年1月29日現在)、住民の移動手段としては決して充分だとは言えません。

公共交通機関として有用な乗り物がほぼバスしかない状態が続いた台中は、MRT開通以前と変わらず路上にはバイクや車が多く、徒歩移動する人も台北と比べると非常に少ないです。

MRTをはじめとした公共交通機関のさらなる充実は、台湾の交通環境を改善する条件のひとつとして必須でしょう。

3. 路上の駐車スペースを減らし、駐車場を増やす

歩道がない道

歩行者が歩くために充分な幅を確保できない場所については、現在ある汽車格や機車格(車・バイクの駐車スペース)をなくします(段階的に減らす)。

台湾はどこに行っても駐車スペースがたくさんある(特にバイク)ので、「駐車スペースから少しはみ出して駐車してもいいか」→「人通りが少ないところなら駐車してもいいか」→「みんながやってるならいいか」と連鎖。

街に駐車スペースがたくさん存在する前提があり、みんなが「まぁこれくらいならいいか」と考えた結果、歩行者が安全に歩道を歩けない状況を生み出しているような気もしています。

しかし、人口密度が高い地区はただでさえ車両の数に対して駐車場所が足りていないのに、駐車可能な場所を減らすだけだともちろん無理が出るでしょう。そこで受け皿となる駐車場を増やします。

叶うなら駐車場を新設する場所は放置されている廃墟の土地を利用したり、車両購入時には日本と同様に駐車場の確保を必須にしたいです。

台北は少ないのですが、台湾の他の街は駅前などの好立地に廃墟が何年も放置されていることも珍しくなく、景観や土地の有効利用に関しても惜しい状況になっています。

4. 交通系ICカードを利用した交通費の補助

台湾は既に高齢者に対して行っている似た政策(敬老卡)がありますが、悠遊カードなどの交通系ICカードにタクシーを除いた公共交通機関にだけ使えるポイントを毎月無料で付与します。

あと台湾の会社は基本的に日本の会社では当たり前の通勤手当がないので、公共交通機関を利用して通勤する人には更に追加で与えても良いでしょう。

5. 交通安全教育を強化

道路を横断する歩行者

最後に根本的解決を図るために一番大事なものとして交通安全教育を強化をします。

自分が車の免許を取得するために自動車教習所へ通っていた頃を振り返ると、運転の技術だけではなく、実技でも座学でも「安全運転とは何か?」を教わったのが印象に残っており、それが安全運転のための心構えに繋がっています。

日本で教習所へ通い運転免許を取得した方なら、車は人の命を奪う凶器でもあることを自覚して運転することを厳しく指導された覚えがあるのではないでしょうか。これを台湾の自動車教習所にも適用します。

自分は台湾の自動車教習所に通ったことがないので断定はできませんが、現状の台湾の道路上にいるドライバーの動きを見ていると、技術はともかく運転マナーの面では運転免許を交付できるラインに至っている人は半数にも満たないように感じます。

また、自動車教習所だけではなく教育部(日本の文部科学省に相当)と連携して、学校側でも交通事故から命の大切さを考える時間を設けることを義務にしたいです。

最後に

以上、台湾の交通事情と自分だったら台湾の交通環境をどう改善するか? についてでした。

一応断っておくと自分は台湾の交通環境をこういうものだと捉えていますし、今の台湾でも充分暮らしやすい方だと思っています。

台湾人自身が危機感を覚えておらず、今の社会の方が効率よく回ると考えているなら、無理に改善する必要はないと思います。

実際、普段台湾で生活しながら街の様子を眺めていると、今の台湾で駐禁場所に一時停車できなくなると様々な場面で混乱が起こることは容易に想像できます。

しかし、住んでいる場所で一番身近な不幸の確率が下がり、不慮の事故が原因で大切な人をなくしてしまった時に「これがこの国の文化」として呑み込むこともなくなるよう、社会が改善に動くのは大歓迎です。

ナカジマチカ

ナカジマチカ / nakazimachica

神奈川県出身。日本で会社員として約7年間働いた後に独立し、中国語を学ぶための台湾語学留学を経てそのまま台湾移住。現在は台中市を拠点にWebコンテンツ制作の個人事業主として生活中。

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ナカジマチカ

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